スポーツ界における男女格差。一口に男女格差と言っても様々な側面があり、今回取り上げるのは金銭面。今でこそ、ウイメンズのトップサーファーともなれば年間で億を稼ぐサーファーも一握りですが存在します。
オーストラリアのトップサーファーたちはどのくらい稼いでいるのだろうか?
しかし、このように待遇が改善されてきたのはごく近年のことだと、ウイメンズ界で最多ワールドタイトル数を獲得した7×ワールドチャンピオンのレイン・ビーチリー「Layne Beachley」(44歳)は言います。
今回の記事は、レイン・ビーチリーが赤裸々に語った現役時代のスポンサー料やコンテスト賞金といった金銭面の内容から、変革に至った時代推移などをお届けします。
スポンサーリンク
サーフィン界初となるミリオンダラー(100万ドル)契約を結んだと言われるサーファーは、2×ワールドチャンピオンのトム・キャロル「Tom Carroll」(54歳)。1989年のことです。
その後、サーファーのスポンサー料は増加したと言われていますが、必ずしもウイメンズサーファーに当てはまるわけではなかったそうです。
トムのミリオンダラー契約から20年弱後となる2006年、レインはウイメンズでは前人未到となる7度目のワールドタイトルを獲得。レイン以前のウイメンズの最多ワールドタイトル数は4回だったので、大幅な記録更新でした。
しかし、その頃の収入はスポンサー料と賞金総額を合わせて年間でおよそ30万ドルだったとのこと。当時の豪ドル円の為替レートだと約2,600万円となります。
また、初めてワールドタイトルを獲得した1998年の年間賞金総額は3.5万ドルほどで「今なら将来有望な12歳の子が稼ぐ額にも満たないわよね」と口にしています。
昨シーズンのワールドチャンピオンとなったカリッサ・ムーアの年間賞金総額は約33万ドルなので、およそ1/10という額だったわけです。
ちなみに、現在のワールドツアーにおいては賞金に関する男女格差は解消され、2016年度WCTイベントの賞金は一律で以下の通り。
メンズの順位別賞金額
1位:100,000ドル
2位:50,000ドル
3位:25,000ドル
5位:16,500ドル
9位:12,750ドル
13位:10,500ドル
25位:9,000ドル
ウイメンズの順位別賞金額
1位:60,000ドル
2位:30,000ドル
3位:18,250ドル
5位:13,250ドル
9位:10,500ドル
13位:9,000ドル
男女の成績上位の賞金額は異なりますが、賞金総額を出場サーファー数で割った一人辺りの平均は同額となります。平均が同額となったのは、WSLが2012年12月にワールドツアーを買収し、2013年の過渡期を終えた2014年からとなっています。
このような現状となったのには、レインも一役買っています。「金銭面の苦労なく、若手サーファーがプロサーファーになる夢を追って欲しい」と願っていたレイン。
そこでレインは7度目のタイトルを獲得した2006年、自身の名前を連ねたWCTイベント「ビーチリー・クラシック」を初開催。同イベントの賞金総額は、当時の過去最高額での開催としたのです。
メンズではハーレーがUSオープンの冠スポンサーを務めていた2009年、プロサーフィンイベントとして過去最大の優勝賞金となる10万ドルに設定したことがビッグニュースとなりましたね。
こういった時代背景がある上で存在する現在の環境。コンテストサーフィンを愛するがゆえに、次世代のためを思って環境改善に取り組んだレインのような存在は、まさにレジェンドと言えるのではないでしょうか。
最後に、男女格差についてレインはもう一点言及しています。それは、男女共通開催時のWCTイベントにおいて、波が悪い時にウイメンズがオンになる点。
ウイメンズのワールドツアーサーファーに対してレインは「自己保身のために黙ってるなんてバカげてるわ」と一喝。声を上げ、行動に移さないと何も変わらないと分かっているレインらしいセリフと言えますね(笑)。
参照記事:「Sexism in sport: ‘If the surf turns to s**t, send the girls out’」
参照記事:「PARITY MEETS PROGRESSION: LOOKING AT PAY EQUALITY IN THE WORLD OF PRO SURFING」