クイックシルバー・プロ・サクアレマの表彰式 photo:WSL
クイックシルバー・プロ・サクアレマの表彰式 photo:WSL

2014年と2015年の二年連続でメンズワールドチャンピオンの座を獲得したブラジル。そんなブラジルでは、ワールドツアーであるWCT入りに欠かせないWQSイベントが4戦開催されます。

WSLが運営するプロサーフィンツアーの「WCT」と「WQS」について

その内、2つが最もグレードの高いQS10,000イベント、残り二つは2番目にグレードの高いQS6,000イベントなので、WQSサーファーにとって参加を見送ることのできないビッグイベント。

なのですが、豪スタブ誌によるとブラジルでの一部WQSイベントでは、サーファーに賞金が支払われていないケースがあると現役WQSサーファーの意見を交えながら報じているので、その内容についてお伝えします。


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スタブ誌がインタビューしたのは、2015年WQSランク101位のパース・スタンドリック(オーストラリア)とWQSランク55位のベイリック・デ・ヴリーズ(南アフリカ)の二名。

賞金が支払われていないイベントは4つ中2つで、クイックシルバー・プロ・サクアレマ、そして五十嵐カノアが優勝したマハロ・サーフ・エコ・フェスティバルと言います。

ブラジルWQSイベント優勝!五十嵐カノアの来季WCT入りがほぼ確定

コンテスト賞金未払いの現状とは

まずはパースのケースから。2015年5月に開催されたサクアレマ・プロの賞金がなかなか支払われず、支払いを受けたのは2016年1月と言います。ただし、かなりの遅延の末に支払われたものの、遅延利息などが加算されることはなかったとのこと。2015年11月のマハロで稼いだ賞金1,000ドルに関しては、未だに支払われていないそうです。

ベイリックの場合は、額面でおよそ4,600ドルが未だに支払われていないとのこと。ベイリックはまた、WQS転戦生活を共にしているブレノこと、ブレント・ドリントンも賞金を支払われていないと言います。

現地では費用を抑えるため、一緒に行動することで宿代やレンタカー代などを折半するそうですが、まとめて払ったベイリックに対し、ブレノは支払いが出来てないそうです。ただ、これはブレノのせいではなく、賞金が支払われていないせいだとベイリックは言います。

ちなみに、ゴールドコースト出身のブレノは、現地ではミック・ファニングやジョエル・パーキンソンと並ぶほど人気の高いローカルスター。にも関わらず、メインスポンサーが付いていない時期が長かったのです。

ここ数年は、ゴールドコースト発のぶっ飛びアパレルブランド「マッド・ヒューイズ(The Mad Hueys)」がメインスポンサーになりましたが、賞金が出なければ金銭的に苦しいとは思いもしませんでした。

ツアー運営団体の対応は

今回問題となっているのはWQSイベントでのこと。このWQSを運営しているのは、WCTと同じくWSL(World Surf League)。WSLのコミッショナー(元WCTサーファーで選手と運営陣の橋渡し的な立場)にパースは相談していると言いますが、WSLとしてはお手上げだそうです。

個人的には、WQSイベントに関してはすべてリージョナル団体(WSLのエリア毎の支部)が管轄し、ブラジルイベントならばWSL南アメリカが賞金なども管理していると思いました。

しかし、パースとベイリック二人が聞いた噂話によると、ブラジル政府が賞金を管理して支払わないので、WSLとしては何も出来ないのが現状だそうです。

WQSサーファーの厳しい現状

二人が口にしているのですが、WCT入りを目指すWQSサーファーの多くは、イベント賞金の獲得を前提として、後払いとなるクレジットカードで遠征費を賄っているので、賞金未払いは許せないと言います。

以前に、オージーサーファーの年収に関する記事を掲載しました。

オーストラリアのトップサーファーたちはどのくらい稼いでいるのだろうか?

上記記事を見ると、億プレイヤーもいるので夢があると思いましたが、現実には一握りのトップの話ですね。まだまだサーフィンはマイナースポーツであり、金銭的に厳しいサーファーが多いのが現実だと考えさせられます。

賞金未払いの場合のWSLの対応は

WSLのルールブックには賞金が支払わない場合の規定が定められています。基本的には、イベント終了時の支払い、もしくは銀行振込ならば、イベント終了時から1週間以内の振込。

規定が守られなかった場合、サーファーへの支払いが行わるまで、一人のサーファーに付き一日100ドルの罰金をイベント側に課せると記されています。

ただ、パースのように半年以上も遅延しているケースを見ると、罰則金は途方もない額になるので、現実的ではないし支払われることもないことでしょう。

まとめ

今回のようなケースがあると、ブラジリアン以外のサーファーがブラジルイベントに参加しなくなる恐れが高くなり、ブラジルのサーフィン熱を考えるとかなり残念な気がします。

また、WQSサーファーの厳しい現状にも衝撃を受けました。昔のよう、大口のスポンサーがドンと大金を出す必要はないと思います。アメリカのオバマ政権誕生前の小口献金のよう、少額づつでもサポートしてる企業がより増えてくれれば良いなと思います。

サーファー側としても、プロとしてスポンサードされるには、企業にメリットをアピールすることが大切ですね。例えば世界を転戦するサーファーならば、現地におけるリアルタイムの情報を提供することで海外旅行好きな人など、他分野とサーフィンを繋げて存在を知ってもらえるといった自己発信も可能なので。

参照記事:「Brazil Must Pay! Brazilian WQS events withhold prize money