5月26日、国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長が、2020年東京五輪の追加種目候補であるサーフィンの会場について「千葉の可能性が最も高い」と言及。
この報道により、自然と千葉開催になるだろうなと考える方が増えたかと思いますが、ちょっと待って下さい。サーフィン界では大きな動きがあり、11×ワールドチャンピオンのケリー・スレーターによるウェイブプールでの開催がベストと報じる海外サーフメディアが増えています。
今回の記事は、これまでの成り行き、海外サーフメディアの報道、私の見解を合わせ、ケリー・スレーターのウェイブプールでオリンピック開催が考えられる理由を説明します。あくまでも主観が大いに混じった内容である事をご理解の上で読んで下さい。
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追加種目候補になるまでの道のり
サーフィンの国際組織を大きく分けると、アマチュアをメイン(実際はほぼプロ)にした国際サーフィン連盟(ISA)、プロのワールドツアーを運営するワールドサーフリーグ(WSL)の2つに分けられます。
オリンピック競技として手を挙げたのは、IOC承認団体であるISA。追加種目候補になる上で、最大の懸念は「チケット収入の見通し」でした。サーフィンコンテストは海のコンディションに合わせて行うので、前売り観戦チケットが販売できないので。
たとえ当日券であっても、コンディションが悪化して乗れる波がなくなれば中断しなければならないので、まともなチケット販売が不可能となります。ちなみに、オリンピック運営におけるチケット収入の全体的割合はとても大きいので、無視できないポイントです。
こういった問題がある事から、昔からサーフィンがオリンピック競技になるなら、人工的に波を発生させるウェイブプールが不可欠と言われていました。タイミング良く、2015年8月にウェイブガーデン社の技術を使ったウェイブプールがイギリスにオープンとなるほど技術の進歩が追いつくことに。
2015年8月1日にUKでオープン!ウェイブガーデン導入施設「サーフ・スノードニア」
そして、追加種目候補の最終選考のヒアリングにはウェイブガーデン社取締役も出席していたので、ウェイブプールでの開催という方向に向いていたのだと思います。結果として、昨年9月、サーフィンはオリンピックの追加種目候補となりました。
しかし、10月になると事態は一変して、サーフィンの五輪開催ならば海との方向となり、日本各地で招致活動がスタートしたのはご存知の通り。おそらく、費用の問題でウェイブプール建設の話はなくなったのではないでしょうか。
この時点で、チケット収入の見通せない海での開催なら、追加種目候補ではあるもののIOCからの正式決定は厳しいなと思いました。
ケリー・スレーターのウェイブプール誕生
昨年2015年12月、初お披露目となったケリー・スレーターによる10年越しの思いが詰まったウェイブプール「KSWC(ケリー・スレーター・ウェイブ・カンパニー)」。ウェイブガーデンよりも遥かにハイクオリティなのは誰もが納得でした。
<速報>ケリー・スレーターのウェイブプール動画公開!本人ライディング映像付き
先月にはWSLのワールドツアーサーファーたちもテストライドし、そのクオリティには思わず笑みを浮かべるほど。「世界のベストサーファーにベストウェイブ」をテーマにするワールドツアーイベントとして開催される日も時間の問題となりました。
ジョシュ・カーがケリー・スレーターのウェイブプールでアーリーウープ
そんな矢先、WSLの親会社であるWSLホールディングスがKSWCを買収。WSLとKSWCが手を組み、世界中にハイパフォーマンストレーニングセンターを作る事を構想していると発表しました。
ケリー・スレーターのウェイブプール「KSWC」がWSLホールディングスの子会社に
WSLとISAが目指しているもの
WSLは2012年、WSLの前身団体であるASPを買収。CEOを務めるポール・スピーカーはビジネスマンであり、スポーツビジネスとしてサーフィン界に参入してきました。
サーフィンワールドツアーを運営するASPがWSLへと名称変更
そのため、一番の目的はサーフィンをメジャースポーツに引き上げること。その大きなきっかけとして、注目しているのがオリンピック。ただし、オリンピックに向けて主導しているのはISA。
ISAの目的はスポーツとしてのサーフィンの発展。つまり、サーフィンの規模拡大にイコールとなるので、ISAとWSLの目的は一致。そのため、WSL、ISA、IOCは、スタブ誌によると4月にミーティングを設けたとのこと。
同ミーティングでは、WSLのポール・スピーカーが「個人的には2020年のオリンピックにWCT(ワールドチャンピオンシップツアー)サーファーを出場させても良いと思ってる」とコメント。
オリンピックにWCTサーファー出場ありの意味とは?
基本的にWCTサーファーは、WSL以外の団体によるコンテストには参加できません。2013年には、ケリーがマーヴェリックス(北カリフォルニア)のビッグウェイブイベントに招待されたものの、同ルールにより参加取消となった過去があります。
そのため、WSLのポールがオリンピックにWCTサーファーの参加を認めるということ自体、オリンピックを商機として捉えているためでしょう。ISAとしても、この申し出を受け入れないはずがありません。
理由としては、WCTサーファーはコンテストを通してメディア露出が多いので、プロサーファーの中で最も知名度が高い存在。オリンピックをビッグチャンスと捉えるなら、有名サーファーの出場は必須であるためです。
ケリーのウェイブプールを買収したWSLの動きは
ここからは個人的な予想ですが、東京五輪にサーフィンが加わるのなら、WSLは日本にKSWCを建設するのではないでしょうか。WSLには「Region(地域)」と呼ばれる支局的な組織があり、「WSL Japan」があるのでKSWCのトレーニングセンターを建設してもおかしくありません。
KSWCの建設費は場所によりけりで200万~2,000万ドル(約2.2~22億円)とケリーは言及。東京五輪のスポンサー料を引き合いに出すと、最高位スポンサーが一社で150億円以上に設定したと報道されています。
今後、WSLが商業ベースでKSWCを世界中で増やすためにオリンピックでアピールすると考えれば、決して高くはない投資だと考えられます。そこで、WSLが日本にKSWCを建設して、ISAとIOCにオリンピックでの使用許可を出せば、乗らない手はないですよね。
ケリー・スレーターの意向
ケリーは自身のウェイブプールをお披露目してから「僕のウェイブプールでオリンピック開催になれば嬉しいな」と何回かコメントしています。公には海での開催という流れになっているので、何か裏がある怪しいコメントに聞こえなくもないですよね。
また、「怪我とか体調面で問題がなく、オリンピックに出場させてもらえたら光栄」と以前にコメント。ケリーは、サーフィン界のマイケル・ジョーダンとも呼ばれ、サーフィン界のみならずスポーツ界のレジェンド。
そんなケリーによるウェイブプールを使い、ケリー本人もオリンピック出場となれば、これ以上の宣伝効果はないですよね。
まとめ
かなり主観と期待が混じった内容かもしれませんが、現状を見る限り、この方向で進む可能性もなくはないと思います。海外サーフメディアが、ケリーのプールでオリンピックがベストと言うのも、可能性がある話だからこそだと思いますし。
裏事情がどうであれ、ケリーのウェイブプールが日本で建設されるのであれば、嬉しくないですか!?利用料が安ければ良いのですが・・・。KSWCのウェイブプール第一弾が、日本であれば嬉しいのですが、果たしてどうなるのでしょうか。
ブラジリアン初となる2014年ワールドチャンピオンのガブリエル・メディナも実は体験していたケリーのウェイブプール最新動画
東京五輪に関する過去記事は、下記リンク先から参照して見て下さい。
2020年東京五輪の追加種目に選ばれるチャンスがサーフィンにはあるのか?