アドリアーノ・デ・スーザ タトゥー

WCTイベント最終戦となるパイプマスターズの最終日までもつれ込んだ今年2015年のタイトルレース。セミファイナルでミック・ファニングが敗退を喫し、アドリアーノ・デ・スーザがヒートを勝ち上がることで、アドリアーノがワールドチャンピオンに輝きましたね。

アドリアーノのワールドタイトルは、昨年2014年ワールドチャンプのガブリエル・メディナに続き、ブラジリアンとしては2人目となる快挙。さらに、アドリアーノはパイプマスターの称号、ガブリエルはトリプルクラウン制覇と、サーフィン界におけるブラジリアン初のタイトルを取り、歴史に名を刻みました。

2014年度ASPメンズワールドチャンピオン:ガブリエル・メディナ

今回の記事は、熾烈なタイトルレースを戦ったアドリアーノとミックの二人をピックアップし、二人のコンテストシーン以外の物語をお伝えします。


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ミックのストーリー

3×ワールドチャンピオンのミック。メンズの歴代ワールドチャンピオンにおいて、トム・カレンやアンディ・アイアンズの偉業に肩を並べる記録であり、今シーズンのタイトルを獲得すれば、頭一つ抜け出る記録が掛かっていました。

そんなミックですが、今年は南アフリカのJベイでのWCTイベントで発生したシャークアタックが大きな話題となりましたね。精神的なショックは大きかったと思いますが、そこから立ち直り、タイトルレースに絡んだのです。

Jベイ(南アフリカ)のWSLサーフイベント決勝でシャークアタック発生:ミック・ファニング

ツアーノートbyハーレー:ミックへのシャークアタック後の反応@南アフリカ

また、パイプマスターズの途中では、兄のピーターが亡くなる訃報もありました。就寝中に他界したとのこと。ちなみに、ミックは1998年にも、もう一人の兄であるショーンを失っています。

ショーンは将来有望な若手サーファーで、ミックにとっては兄であり憧れのサーファーでした。しかし、車での事故で若くして命を落としたのです。ショーンが18歳、ミックが16歳の出来事でした。

このように、様々な困難を乗り越え、タイトルレースに臨んだミック。4度目のワールドチャンピオンの座は逃しましたが、だからと言ってミックの活躍が色褪せることはないでしょう。

ミックの今季ハイライト動画

アドリアーノのストーリー

今シーズンのスタート前、仲の良かったプロサーファー仲間のリカルド・ドス・サントスが銃殺される事件が発生。ショッキングなニュースとして、サーフィン界では大きく報じられました。

訃報:リカルド・ドス・サントス

そこでアドリアーノは、WCTイベント優勝をリカルドに捧げたいとの思いを強く抱き、今シーズンのツアーがスタート。迎えたWCTイベント第二戦、アドリアーノはファイナル進出を果たしますが、惜しくも優勝には至らず。

しかし、次なる第三戦において、ついにリカルドに捧げるべくイベント優勝を果たしたのです。

ツアーイベント第三戦終了後のアドリアーノ・デ・スーザ&ジョンジョン・フローレンス@2015

その後のイベントでは調子が奮わず、連続して13位という結果に終わっています。そして迎えたJベイでのイベント。ここで、ミックとアドリアーノの人生が交差することに。

ミックのシャークアタック発生時、すでに敗退していたアドリアーノは、空港へ向かう車に乗っていました。そんな最中、飛び込んできたミックのニュース。

居ても立ってもいられなくなったアドリアーノは、ミックの側にいてあげたいと思い、会場へと引き返しているのです。不器用だけど実直そうなアドリアーノらしい優しさですよね。

アドリアーノにとっても、様々な想いを抱えていた今シーズン。そして、念願のワールドチャンピオンに輝いたのです。

アドリアーノのパイプマスターズ終了後インタビュー

今シーズンのアドリアーノにとって、大きな出来事はリカルドの死であったため、リカルドの話題から始まります。リカルドの他界後、リカルドの生涯を忘れないためにも、タトゥーを入れたと言います。

タトゥーは、リカルドが入れていたタトゥーと全く同じ場所で同じ文字。文字の意味はポルトガル語で「Strength(強さ)」、「Balance(バランス)」、「Love(愛)」の三文字です。

インタビュー後半では、今回のワールドタイトルを兄に捧げたいと言及。裕福とは言えない家庭で育ったというアドリアーノが、サーフィンを始めたのは8歳のこと。

きっかけは、アドリアーノにとって初めてのサーフボードを、兄が7ドル出して買ってくれたためです。アドリアーノいわく、当時の7ドルは大金で、そのボードがすべての始まりとなり、コンテストサーフィンの頂点に立ったと話しています。

まとめ

スター性の高いミックに対し、WCTランキングとは比例しない地味な存在であったアドリアーノ。2013年からは、メインスポンサーがブラジル国内ブランドと、メジャーブランドは手を出していないですからね。

はっきり言って、ランキング上位サーファーとしては恵まれていませんでした。しかし、ハングリー精神で努力を積み重ね、ツアー生活10年目にして念願のワールドタイトル獲得。

今シーズンもまた、非常に印象的なタイトルレースを見れたことを嬉しく思います。

アドリアーノのパイプマスターズ終了後インタビュー