左:アドリアーノ・デ・スーザ 右:ピンガ Photo: espn.uol.com.br
左:アドリアーノ・デ・スーザ 右:ピンガ Photo: espn.uol.com.br

近年の台頭著しいブラジリアンサーファー。以前であれば、ワールドツアーの図式は「アメリカン」vs「オーストラリアン」でしたが、今やメンズWCTサーファー数で見れば、「ブラジリアン」vs「オーストラリアン」に様変わりしています。

ブラジリアンの台頭でよく耳にするのが「ブラジリアンストーム」と呼ばれる世代。しかし、その実態に関してはあまり知られていません。

今回の記事は、ブラジリアンストームを影で支えた裏方の一人であるルイス”ピンガ”カンポスに対し、ワールドツアー運営団体「WSL(ワールドサーフリーグ)」が行ったインタビュー内容の一部をお届けします。


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年々、ワールドツアー入りするサーファー数が増えているブラジリアン。2014年にはガブリエル・メディナがブラジリアンとして初のワールドチャンピオンという悲願を達成。

2014年度ASPメンズワールドチャンピオン:ガブリエル・メディナ

翌2015年にはアドリアーノ・デ・スーザがワールドタイトル獲得と、2年連続でブラジリアンがメンズWCTの頂点を極めることになりました。

2015年タイトルレースを演じたアドリアーノ&ミックのビハインドストーリー

この勢いに乗るブラジリアンストームの仕掛け人の一人であるのが、マーケティングのプロでありコーチであるピンガ。現WCTサーファーの中で、ピンガが育てたのは、アドリアーノ、ミゲル・プポ、ジャドソン・アンドレ、カイオ・イベリ、イタロ・フェレイラといった面々だそうです。

ブラジリアンストーム仕掛け人のピンガとは?

ブラジルのリオデジャネイロでサーフィンしながら育ったピンガ。そんなピンガが、ブラジルのサーフ業界で働くようになったのは80年代半ばのこと。

クイックシルバーやオークリーで数年働いた後に、ピンガは若手サーファーのスカウトと育成といった包括的アプローチを行うべく、「The BOX Sports Marketing」社を立ち上げます。

スカウトから育成におけるポイント

ピンガが才能ある若手を発掘した時、最初にチェックするのは家族。子供をプロサーファーとして育成したいと言っても、プロとしてのキャリアを築くには5~6年ほど掛かったりと、簡単になれるわけではありません。

そこで、家族の望みや目標などを最初に確認すると言います。実際に育成するとなると、アスリートとして育てるだけでなく、立派な人格形成も重要なポイントの一つ。

人格形成をポイントに挙げる理由は、子供たちの将来を考えてのこと。プロアスリートとなれば、多忙な生活や節制なども求められます。そのため、全ては自分のためであることを理解し、納得できる多角的な視点を持たせるためと言います。

具体的なプログラム

ピンガが育てた現WCTサーファーと組むようになったのは、アドリアーノが9歳、ジャドソンが12歳、ミゲルが10~11歳、カイオが9~10歳、イタロが12~13歳の頃。

すべてのキッズに共通してピンガが課せることは、水泳教室、英語教室、私立の学校に通わせることだそうです。また、道具の提供、トレーニング、スポンサーの紹介なども、ピンガが全て面倒を見ます。

さらに、出身地によっては子供を預かることもあり、ピンガが提供するアパートで共同生活を送らせるとのこと。ちなみに、ジャドソンやイタロなどは、サンパウロ郊外のアパートで共同生活を送っていたそうです。

ピンガのコーチング

ピンガのコーチングは、最適なトレーニング環境を与え、海での見栄えといった客観的な視点を本人に養わせることで、ヒート中に何をすべきか判断できるように育て上げること。

つまり、サーファー本人は自分自身を分析する力を鍛えあげるというわけです。そのサポートとして、ピンガは徹底的に対戦相手を分析し、情報を与えるそうです。

ブラジリアンとブラジリアン以外のサーファーの違い

裕福ではない家庭が多いブラジリアンにとって、大きな原動力となるのは「生活水準を変える大きなチャンス」と口にするピンガ。

ピンガによると、貧しい子供はアグレッシブかつ激しい性格とのこと。そんな子供たちが、教育や労働倫理を学び、本来持っている激しさを全面に出せば頂点に立つことができると話し、アドリアーノが実践して見せました。

まとめ

昔からブラジリアンについて言われていたセリフは、ハングリー精神が強いという点。ただし、本人がいくら意欲的であっても、正しい道へと導いてくれるピンガのような存在がいないことにはゴールに辿り着くことは困難ではないでしょうか。

ピンガが果たした役割は非常に大きなものですが、ブラジリアンストームの台頭は、ピンガがスカウトした子供のスポンサーになってくれたサーフブランドなど、業界全体のサポートがあったからこその結果でしょう。

アドリアーノを例に取ってみれば、9歳でピンガに引き上げられ、ワールドタイトル獲得は28歳と、19年の月日を経てのこと。長い長い期間の末の結果であることを知ると、感慨深いものがあります。

参照記事:「Meet Luiz 'Pinga' Campos, the Man Behind the Brazilian Storm

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