今では常識とも言えるエアリアルサーフィンの元祖と言われるクリスチャン・フレッチャー(44歳)。サーフィン界では、70年代後半から、ラリー・バートルマンなどがエアリアルにトライするようになりましたが、マニューバとしてエアリアルを確立させたのがクリスチャンだと言われています。

海でエアリアルをするようになったクリスチャンは、スケートライクなスタイルを取り入れ、ミュートやインディーといったグラブエアーを見せていました。タトゥーだらけの全身に加え、メインストリームと異なるアプローチでサーフィンするといったら、完全にアンダーグランドな感じですね。

サーフィン以外でも、我が道を進んだクリスチャン。サーフ雑誌のインタビューでは、当時のワールドツアーサーファーの実名を挙げて、「あいつはビッグウェイブにチャージしない」とか、「あいつは守りのサーフィンをしてる」などと言いたい放題。

しかし、そんな性格に賛同するファンもいて、1990年のサーファーポール(サーファーの人気投票)では7位となり、ハードコアなアンダーグランドヒーローとして、今なお異彩を放っています。

今回の動画は、そんなクリスチャンがロンボク島のデザート・ポイントとバリ島でフリーサーフする映像となります。しかし、ただのサーフィン映像ではなく、冒頭で登場する少年とクリスチャンの深いつながりがあるストーリーです。

冒頭で登場する少年「ヘンドラ」は、デザート・ポイントにあるワルン(屋台)のオーナーの息子。クリスチャンとの出会いは6年前にさかのぼります。2008年の夏、コンディションの決まったデザート・ポイントでサーフしようとワックスを塗っている時、当時5歳だったヘンドラの叫び声が聞こえ、思わず駆け寄ったクリスチャン。

ワルンの店先で、ヘンドラの右足がバイクのチェーンに絡まっていたそうです。結局、ヘンドラは右足の指を3本、そして1本の足指の半分を失うことに。ロンボク島の辺鄙なエリアに位置するデザート・ポイントなので、ワルンのオーナーを務める父親が、治療費を捻出できるはずがないのは想像に難くないですね。

そこでクリスチャンは、その日は海に入らず、一日中、ビーチにいるサーファーから募金を募ったそうです。そのお金で、ヘンドラはしっかりと治療を受け、今では普通の子供同様に生活を送れるようになったと言います。クリスチャンの行動がなく治療が遅れていれば、足に障害を負う可能性はおろか、命を落としたかもしれないとのこと。

その後、クリスチャンはデザート・ポイントを訪れる度に、ヘンドラと交流を深め、サーフィンを教えているそうです。アンダーグランドヒーローと言えば、身勝手でやりたい放題のイメージもありますが、それ以上に情が深い印象を受けるストーリーかと思います。


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